タイトルと中身

2006年7月4日コラム

近頃、新書が流行っているそうだがそれと同時に
叫ばれているのがタイトルと中身の不一致だ。

新書の製作現場の実態を伝える番組を見たことがあるが
それによるとタイトルは非常に重要な要素であり、
これの決め方ひとつで売り上げが大きく変わるためか
かなり慎重に決められているらしい。
こうして売り上げのことを第一に考えたことに対する弊害が
冒頭で挙げたタイトルと中身の不一致なのだろう。

このように新書などの評論文ではタイトルと中身の不一致というのは
大きな問題になり得るが、小説の場合はそのような問題は起こらない。
小説はタイトルを聞いただけでは、具体的な中身を想像することができないからだ。
「○○殺人事件」というタイトルなのに最後まで殺人がなかった
などという例外は想像できなくもないが、あまり現実的ではない。

しかしながら評論と同様に小説においてもタイトルは重要な要素であり、
実際にタイトルのインパクトで購入を決めることも少なくない。
もしそのような動機で購入した結果、内容が面白くなかったとしても
読者の批判は、主に内容に対してのみ向けられる。
小説と評論ではタイトルの位置づけ自体が異なるからだ。
例えば、本文を読んだ上でそれに即した適切なタイトルを記述せよ、
などの問題が論述に対して出されても小説に対して出されることはない。
(知識を問うているのなら話は別だが)

つまり、小説において奇抜で人目を引くようなタイトルを付ける行為は
評論にあるような弊害を伴うことのないノーリスクハイリターンな
行為であるということだ。
言うまでもなくこれは小説に限った話ではない。